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  • もくじ
  • 序章 はじめに
  • 第一章 BISの国際基準
  • 第二章 本来の真相
  • 第三章 「罪となるべき事実」の不存在
  • 第四章 「真相」を隠蔽した大きな理由
  • あとがき

第一章
BISの国際統一基準

2.規制・自己資本比率とは

 1988年(昭和63年)12月13日には、国際決済銀行(BIS)が国際統一基準とした自己資本比率8%規制が我が国でも通達された。

2-1.BIS規制

 BIS規制は国際業務を行う銀行の自己資本比率に関する国際統一基準のことで、バーゼル合意ともいう。BIS規制では、先進諸国(現G10諸国)を対象に、自己資本比率の算出方法(融資などの信用リスクのみを対象とする)や最低基準(8%以上)などが定められている。
 総資産に対して自己資本比率8%を達成できない銀行は国際業務から事実上の撤退を余儀なくされる。BIS規制は国際間における金融システムの崩壊を防ぎ、その安定化や銀行間競争の不平等を是正する目的で、1988(昭和63)年7月にバーゼル銀行監督委員会により発表され、適用が開始された。

「BIS規制」への経緯

1980年代前半:

米国のS&Lが商用不動産投資などで経営危機に陥り、倒産が続出した。

1986 年 (昭和60年):

米国がイギリスを強引に巻き込み、自己資本比率8%規制を早々に2国だけの合意を取り決めた。

1987 年 (昭和61年):

日本が「株式の含み益の45%」算入を認めることを条件に合意した。

1988 年 (昭和62年):

西ドイツ、フランスも合意し、「BIS規制8%」が6月決定通達された。

1988 年 (昭和63年):

12月13日、我が国でも国内適用が通達された。


 昭和63年12月22日の大蔵省銀行局長通知である。

昭和63年12月22日の大蔵省銀行局長通知

2-2.自己資本比率とは

<BISの国際統一基準の算出方式>

自己資本比率
8%以上

自己資本(TierⅠ+TierⅡ+TierⅢ-控除項目)

× 100%

リスク・アセット


自己資本
・・・自己資本には、TierⅠ(基本的項目)として資本の部、TierⅡ(補完的項目)として劣後ローンや有価証券含み益の45%など、TierⅢ(準補完的項目)として短期劣後債務が含まれる。

リスク・アセット・・・リスク・アセットとは、資産(融資や債券など)に関する貸倒れの危険性の総量のことで、資産の種類ごとに一律のリスク・ウェイトを乗じて加算する。したがっ て、政府向け融資(国債)は0%、銀行向け融資は20%、住宅ローンは50%をそれぞれ乗じて合計したものとなる。現在、リスク・アセットの算出には、市場リスクによる調整が含まれている。

 専門書には次のように記されている。
「我が国の自己資本比率規制は従来、自己資本比率の概念を「自己資本」/「総資産」としてとらえ、これを一定水準以上とする行政指導が行われてきた。これはいわゆるギャリング・レシオといわれる。
これに対し、国際基準による自己資本比率規制は分母を「総資産」ではなく、リスク・アセットとする方式(いわゆる、リスク・アセット方式)によることとされている。
リスク・アセットとは銀行の貸付金、有価証券等の資産項目について、その性質の違いにより貸倒れないし元本割れなどのもろもろの金融リスクの大小を判定して一定のリスク・ウェイトが設定される、リスクの小さい資産ほど小さいリスク・ウェイトを掛け、大きいほど大きなリスク・ウェイトを掛け、そのウェイトづけに基づいてこれを合計する。このようにして計算される金額がリスク・アセットである。
(『全訂 銀行法』小山 嘉昭 著より引用)

 

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